1995年、世界で4000万売った、世界の女性の救世主と化した21才能 のアラニスモリセットのデビュー作アルバム↓聴いたことありますか?
ちなみに一曲目のドラムのプログラミングは、屋敷豪太さん、日本人です。
私は15歳の時にこの曲を聞いていて、単純に「厳しい両親の期待に苦しむ子の歌」の歌詞とは思って素敵な曲だと思って聞いていたけど、何やらその後2ndや3rdとアルバムの歌詞
(「この10年間以上は、なんだったんだろう? まるで4分前のことのようにまだヒリヒリ痛む」という歌詞で始まるこの2002年の曲。「10年以上前?って、アラニス27歳だから、未成年の時のことじゃん」と思ったのは覚えています。)
を読んでいるとずっとずっと苦しみ続けている彼女がただならない雰囲気だったので、一体全体彼女は何があったんだろうと、長年不思議に思っていたんですが、この動画を見て一発解決しました。
あの頭ポンポンしてる男だろうと思います。お父様もおそらくそれに気づいていて、インタビュアーに「我々親ができることは、この子の周りにきちんとした人たちがいるのかを確かめ、どういう人たちかをきちんと選べるように...」といった趣旨のことを言葉を選んで述べ、アラニスちゃん18歳は「余計なこと言うな親父」というような不服そうな顔をしています。
この頭ポンポン男はレスリー・ハウ(Leslie Howe)というオタワの男で、当時はOne To Oneというユニットでデビューしていました。シンガーの美女レニ(Reny)はその男の妻です。(1999年に離婚。)
アラニスに、''Hand In My Pocket''という曲がありますね。私も大好きな歌です。
彼らはアラニスの大成功の後、我らも負けじと路線を変えます。1997年にArticifial Joy Club(人工幸せクラブ)という恐ろしげなバンド名に変更、「Sick&Beautiful」という地獄のうめきのような曲を書いています。悪魔学というやつですね。
しかし、彼らは1999年に離婚。おそらく、1998年のアラニスの2ndの歌詞。このアルバム、謎で具体的な歌詞満載です。
アラニスは11歳の時にレスリーとレニ夫妻に出会ったとレスリーは言っています。「アイドルを目指すなら、オリジナルソングとデモテープを作ろう」ということになったのでしょう。地元で小さなレーベルを営む夫妻の元にアラニスを連れて行ったのはアラニスのお父さんだったと語っています。状況がよくわかります。かわいそうに、お父様も。わざわざ自ら娘をそんな輩の元に連れて行ってしまって。
そして自分で作詞をしてみたりし、レスリーに作曲とアレンジをしてもらい、レニにボイトレを受け、ダンスのレッスンを受け、「そんなレベルじゃアメリカ進出はできないぞ」と発破をかけられ、カナダの健気な子供は憧れの大人の言うことを聞いて頑張っていたのだと思います。それはよかったのですが...
このアルバムの歌詞がかなり具体的ではっきりしました。MVにもあるように、80年代丸出しの盛り髪の14歳のアラニスは、おっさんにこういうことをされたのです。そして、彼女の歌による告発のようなことが起こって行くわけです。歌詞は、こちらの方の翻訳が完全に正しいと思いますので、ご紹介しておきます。 https://saicish.blogspot.com/2012/04/hands-clean.html
https://www.youtube.com/watch?v=9KWYhBoH8f4
2003年頃、このアルバムが出てなお、この「14歳の女の子が信頼する大人から性的虐待を受けていた、その後も10年以上続く被害者の苦しみ」という重要なテーマがスルーされました。世界的にも、スルーされていました。「あるあるだよね」「元気のいい男のサガだから仕方ないよね」くらいの、そういう暴力的な世界だったと思います。日本は全然まだまだそういう社会だと思いますが。
女性がもうちょっと桐貴さんを見習ってバスンと言わないといけないと思います。世界中の女性が。で、正直、このニュースを目にするまで、私自身もスルーしていました。
「東京在住の写真家・石田郁子さんは1993年3月、中学3年生の卒業式前日、通っていた中学校の美術教諭から北海道立近代美術館の展覧会に誘われた。この日から大学時代まで、同じ教諭からキスをされたり、体を触られるなどの性暴力を受け続けることになる。」
この事案の記事を目にした時、ふとアラニス・モリセットのことを思い出したのです。しかし、きちんと訳された歌詞の翻訳がなく、正直どの和訳もふんわりと日本のやまとなでしこ的な、女性的な表現だし、訳自体がけっこう間違っているので、日本人リスナーは真実に気づきませんでした。今でも、おそらく歌詞の内容をしっかりとは把握していないと思います。「アラニスって、なんか怒りぶちまける恐くて元気のいい女だな」くらいのイメージの日本人が多いと思います。
こうして、2017年ごろから欧米圏の英語話者の間では育まれていっている「10代の頃、性被害に遭っていた女性が、歌にして歌うことで七転八倒の精神的な苦しみを乗り越えていく」という事象を2022年になった今もなお捉えきれずに、今も大昔と同じようなことを続けているのだと思います。
そういうのがいやで、私は訳そうと思います。大衆音楽って、大衆の意識改革に重要だと思うからです。
で、訳しました。長文お読みいただき、ありがとうございました。